研究概要 |
EBウイルス関連NK/T細胞増多症の病態解明と治療法確立を目的に,疾患のスペクトラムと予後解析,ウイルス感染様式とウイルス抗原発現の解析,樹立細胞クローン解析,宿主免疫応答,潜伏感染ウイルス排除の試みについての研究を実施した. 1.臨床的解析:EBウイルス関連疾患のスペクトラムを明確にとらえることができた.予後調査から,EBウイルス関連NK/T細胞リンパ腫や血球貪食症候群へ進行する患者群の特徴が明らかになってきた.NK細胞腫瘍研究会(代表,押味和夫教授,順天堂大学内科学)との共同で,NK細胞腫瘍の全国調査結果を報告した. 2.樹立細胞におけるEBウイルス遺伝子の発現様式:患者末梢血からEBウイルス感染NK/T細胞株を樹立した.多くの細胞はEBNA遺伝子のQpプロモーターを使用してEBNA1を発現し,EBNA-1とLMPを発現している(Latency II型)が,クローンによってはI型も認められた. 3.EBウイルス感染細胞クローンの解析:慢性活動性EBV感染症や蚊刺過敏症では末梢血に優位なNK/T細胞クローンが検出されるが,優位のクローンのほかにNK, T, B細胞にもウイルスが感染したオリゴクローンのプールを形成していることが明らかになった. 4.臨床病型の決定要因:種痘様水疱症ではT細胞浸潤,蚊刺部ではNK細胞浸潤が特徴的であり,患者末梢血のEBウイルス感染T,NK,B細胞のプールから,紫外線,蚊刺などの刺激で,特定の細胞が選択的に病変部に浸潤し,細胞傷害性T細胞の反応を介して,特有の臨床像を形成する.本研究によって病変部での再活性化の証拠が得られ,病態の仮説が裏付けられた(論文準備中). 5.潜伏感染関連遺伝子発現制御を用いた治療への試み:mutant EBNA-1を細胞導入することによって,EBウイルスエピトープを排除できた(今井章介教授,高知大学感染分子病態学との共同研究).潜伏感染ウイルス排除療法のプロトタイプになり得る. 6.新規の臨床診断法の開発:EBウイルスDNAを定量的にモニターできるrealtime PCR法の臨床応用を可能にし,病気の悪性化や進行を予見するために重要な検査になっている.さらに,皮膚病変の痂皮を用いた新規診断法を考案した(特許申請中,論文準備中).これによって,生検などの侵襲的検査を回避でき,全国から送付される検体を検査することが可能になった.
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