当該研究において、接触過敏反応(CHS)の長期に及ぶ抗原特異的免疫学的不応答状態(免疫学的トレランス)におけるdectin-2の役割を検討した。Dectin-2は近年見出された表皮ランゲルハンス細胞(LC、皮膚の代表的プロフェッショナル抗原提示細胞)に選択的に表現される分子であり、その機能の全容に関してはいまだ完全に明らかではない。我々はDectin-2は膜型蛋白であり、その細胞膜外ドメインのcDNAを発現ベクターにサブクローニングし、大腸薗に形質転換を行いリコンビナント蛋白を作成した。In vitroにおいてこのリコンビナント蛋白(可溶性dectin-2;sDec2)と抗CD3_εをプラスティックディッシュにコートし、Tリンパ球をこの環境下で培養した。すると抗CD3の至適濃度下にあってもsDec2の付加はT細胞の増殖を促進し、このことから少なくともin vitroにおいてはdectin-2はco-stimulatory分子として機能しうる事が明らかになった。また、左記の活性は培養条件中にsDec2を添加することにより阻止され、よってsDec2はdectin-2の内因性活性阻害剤として機能しうる事が判明した。このsDec2を用いin vivoのアッセイを通してトレランスにおけるdectin-2の機能を解析した。その結果以下の事が明らかになった。1)CHSの誘導相、惹起相共にsDec2の投与により影響を受けなかった。2)UVB照射後、ハプテンでマウスを感作・惹起すると認め、ハプテン特異的免疫抑制現象を誘導しうる。この系においてsDec2のUVB照射後感作前の投与により免疫抑制を認めなかった。この結果はUVBによるCHSの免疫抑制にもdectin-2を介する経路が関与することを示す。3)2)で処理したマウスを14日間無処置後、同一ハプテンで再感作・再惹起を行うとsDec2が存在しない場合CHSは起こらず、抗原特異的免疫学的トレランスが起こった。しかし、sDec2を投与された群ではトレランスは起こらなかった。この結果はトレランスの誘導にdectin-2を介する経路が関与することを示す。同時にトレランスの誘導には免疫抑制活性を持つT suppresor cells(Ts)が関与する事が知られているので、dectin-2がTsの誘導に関与することも示唆される。4)sDec2結合T細胞の表面抗原パターンをFACS解析にて検討したところ、CD4+CD25+の表面抗原パターンを示す事が判明した。
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