研究概要 |
研究目的 放射線腸障害は致死的な放射線傷害であり腸腺窩の再生が鍵を握る。この治療法を開発する目的でES細胞の腸管移植による再生について研究する。 1.照射された腸管にマウスES細胞の移植と生着を確認すること。 2.ES細胞の生着を賦活するために,照射腺窩における種々の物質による再生賦活を検討する。 研究成果 研究1.放射線障害小腸に対するES細胞の移植と生着について 小腸の一部に安全に照射する方法を開発した。本法を用いることにより局所への大量放射線投与にもかかわらず長期生存することができ,ES細胞の移植,生着確認実験を可能とする。実際に30Gy照射13日目において肉眼的組織学的に小腸上皮の完全脱落が観察された。照射した部位にES細胞を投与し、観察したところ、小腸において肉眼的コロニーが認められた。組織学的に検索した結果、未分化な細胞の中に再生腺窩の所見が観察された。再生腺窩はES細胞由来であることを分子生物学的マーカーにより確認した。この細胞はES細胞由来を考える未分化なマーカーにより染色された。また一部では腺管構造を示しており、分化傾向を持つことが確かめられた。以上からES細胞の放射線傷害腸への移植は腸に生着し増殖分化傾向を持つことを明らかにした。 以上、投稿準備中である。 研究2.小腸腺窩における放射線傷害に対するサイトカイン等による修飾 上皮増殖促進因子であるβEGF,腸管障害防御作用を持つメラトニンおよび水酸基ラジカル除去剤の腸腺窩に対する放射線照射後の修飾について検討した。βEGFとメラトニンについては対照と差はなかった。放射線では照射によって原子の電離、励起が引き起こされ、フリーラジカルの生成を介してDNA障害がおきる。その原因物質である水酸基ラジカルを除去することにより腸障害が生体内でも防護されることが明らかになった。この成果について報告した。
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