研究概要 |
3'-Iodohippuryl-N^ε-maleoyl-L-lysine (HML)のglycyl-lysine配列のhippuryl-lysine (HL), HLのεアミノ基をBoc保護したHBL, L-lysineをD-lysineに変換したD-HL, D-HBLを合成し,ラット腎臓より調製したBBMVsとインキュベートしてm-IHAの生成を検討した. Carboxypeptidase M (CPM)やrenal dipeptidaseの特異的阻害剤であるMGTAやcilastatinを添加した場合についても検討した.Glycyl-ornitine配列を有するHBOを合成して同様の検討を行った.また,HBOのアミノ基をマレイミド基に変換したHMOとチオール化Fabとの反応でHMO-Fabを作製し,マウス体内放射能動態をHML-Fabと比較した. HL, HBLはBBMVsの存在下でm-IHAを遊離し,その遊離はCPMの活性化剤Co^<2+>の添加で増加したが,MGTAの添加で阻害された.Cilastatinは影響を与えず,D-HL, D-HBLはm-IHAを遊離しなかった.これらの結果は,HMLのglycyl-lysine結合の開裂にCPMが関与することを支持すると共にCPM以外の酵素の関与も示された.HBOはBBMVsの存在下でHBLに比べて遙かに少ないがm-IHAを遊離した.しかし,HMO-Fabは腎臓での放射能集積をHML-Fabと同程度に低減した.これは,Fabが細胞に取り込まれる過程で,基質部位と刷子縁膜酵素との接触が促進された結果と考えられる.以上の結果は,また,HMLが腎刷子縁膜酵素により代謝されることを改めて支持する.
|