研究概要 |
[^<125>I]3'-iodohippuryl-N^ε-maleoyl-L-lysine(HML)で放射性ヨウ素標識した抗体フラグメントでは,腎刷子縁膜酵素の作用でHML分子内のglycyl-lysine配列が開裂して[^<125>I]メタヨード馬尿酸(IHA)を遊離し,直接標識Fabと比べ腎臓での放射能集積量を投与早期から減滅する.本研究では,HMLのlysineを他のアミノ酸に置換した場合の刷子縁膜酵素による認識性を検討して,本薬剤設計をさらに検証すると共に新たな薬剤創製の可能性について検討した. HMLのlysineの側鎖アミノ基をBocで保護したモデル化合物HBL,そのlysineをL-tyrosineに置換したHT,さらにはornithine, glutamineまたはhistidineに置換したHBO, HGまたはHHを,ラット腎臓皮質より調製した刷子縁膜小胞(BBMV)とインキュベートし,IHAの遊離量を調べた. モデル基質をBBMVとインキュベートしたところ,いずれも経時的にIHA遊離量が増加した.さらにtyrosineを導入したHTは,これまで確認されたカルボキシペプチダーゼのみならず,ジペプチダーゼによっても開裂を受けることをジペプチダーゼの特異的阻害薬であるシラスタチンを用いた検討から明らかになった. これらの結果は,HMLのL-lysineを様々なアミノ酸へ変換することにより腎臓刷子縁膜に存在する異なる酵素群により開裂を受ける標識薬剤の開発が可能であることを示唆する.したがって,ヨード馬尿酸以外の様々な標識部位に適切な基質構造を結合することにより,放射性ヨウ素をはじめとする様々なβ^-線放出核種を標識核種として用いた場合においても,腎放射能の低減を可能とするペプチド標識薬剤の開発が可能であることを示す.
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