当研究は、腫瘍中の低酸素細胞に特異的に作用する新しい作用機序の薬剤として、低酸素条件下の放射線照射によって活性化されるmitomycin C(MMC)のプロドラッグを基礎的に評価することを目的とした。まず、より合成が容易である5-fluoro-2'-deoxyuridine(FdUrd)の放射線活性型プロドラッグを開発・合成し、in vitroおよびin vivoの実験腫瘍系における詳細な検討を行った。その結果、FdUrdのプロドラッグがin vitroのみならずin vivoにおいても有効に活性化されることが判明したが、臨床応用のためにはさらに強力な抗癌剤のプロドラッグ化が望ましいと考えられた。したがってFdUrdよりも濃度基準ではるかに強力な抗癌剤であるMMCの放射線活性型プロドラッグを合成し、生物効果を系統的に評価する研究を計画した。本年度はまずMMCプロドラッグの合成を完了し、培養細胞を用いたin vitroの実験から始めた。MMC自身は10マイクロモルにおいても相当な細胞毒性を発揮するが、当該プロドラッグは40、100、250マイクロモルの濃度においても細胞毒性は認められず、プロドラッグ化による毒性の低減が示唆された。低酸素状態における放射線照射との併用については、検討を始めたばかりであり、次年度も引き続き検討を加えていく予定である。またそれに続いて実験腫瘍を用いた効果と毒性の検討を行う。
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