硼素中性子捕捉療法に利用されている京都大学原子炉(KUR)の重水設備の治療場について、我々は、これまでマイクロドジメトリーの手法を用いてこの場の特徴を明らかにしてきた。測定には1/2インチ直径球の有感部を持つ組織等価比例計数管(TEPC)や0.5mm×0.5mmφの円筒有感部の極小組織等価比例計数管(UMC)を用い、シングルイベントスペクトルを導出した。これらの結果から、重水の厚さや、人体の深さの関数として、熱および熱外中性子の寄与を評価する基礎データを把握した。しかしながら、硼素中性子捕捉療法においてホウ捕捉反応による線量寄与を評価しなければ生物学的効果との関連が明らかにならない。これまでの研究の発展として、この研究は硼素含有壁を持つ組織等価比例計数管を用いて重水場の線質評価を行った。 これまでの研究の結果として、^<10>B濃度50ppmでは^<10>Bが熱中性子を捕捉後発生する^4He(1.49MeV)と^7Li(0.85Mev)の効果が観測され、エネルギー付与の大半がそれらで与えられていることが確かめられた。熱・熱外中性子モードのRBEを推定した。硼素含有壁を持つ組織等価比例計数管での測定では、熱中性子モード(00-0011)の平均のRBEは3.3(10Gy end point)と熱外中性子モード(CO-0000)の平均のRBEは3.2(10Gy end point>であった。A150壁組織等価比例計数管での測定では、熱中性子モード(00-0011)の平均のRBEは2.9(10Gy end point)と熱外中性子モード(CO-0000)の平均のRBEは2.8(10Gy end point)であった。
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