本研究では、ヒト腫瘍細胞においてHsp90阻害剤であるGeldanamycin(GA)およびその誘導体17-N-Allylamino-17-Demethoxy Geldanamycin(17AAG)と放射線を併用してその相乗効果について検討し、放射線抵抗性を示す癌などに対してより効果的で副作用の少ない放射線療法の質的向上につながる解析を行った。これらの結果からGAによる放射線増感効果の起因はPI3K-Akt経路の抑制によるアポトーシスの誘発とEGFRないしはErbB-2の発現抑制に起因する生存シグナル経路の抑制により得られる事が示唆された。また、17AAGと放射線の併用は放射線抵抗性を示す癌細胞において有用であり、17AAGの放射線増感効果の起因はアポトーシスの増強による事が示唆された。さらに同様の結果はヒト腫瘍の試験管内モデルである多細胞スフェロイドにおいても観察された。放射線治療においてアポトーシスの誘発は効率の良い治療法であると考えられている。また、種々の癌においてPI3K-Akt経路の活性、関連分子であるEGFRファミリー、Aktの活性亢進が認められる。またそれらの分子の過剰発現は薬剤耐性、放射線抵抗性などに関与していることからHsp90阻害剤と放射線の併用療法は実験的に有効性が高い事が示され、臨床の放射線治療でも検討する価値が十分にあると考えられる。
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