研究課題/領域番号 |
14370287
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小山 司 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10113557)
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研究分担者 |
安部川 智浩 北海道大学, 医学部附属病院, 助手 (80301901)
久住 一郎 北海道大学, 医学部附属病院, 講師 (30250426)
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キーワード | フェンサイクリジン / 非定型抗精神病薬 / 認知機能障害 / 前頭葉 |
研究概要 |
内側前頭前野は統合失調症の認知機能障害の責任部位の1うど考えられる。 Phencyclidine (PCP)精神病では、統合失調症類似の陽性症状、陰性症状および認知機能障害が認められることから、PCP精神病は統合失調症の有用な病態モデルである。PCPが内側前頭前野での興奮性アミノ酸伝達に与える影響と、この神経伝達の変化へ非定型抗精神病薬であるclozapineの効果を検討し、以下の結果を得た。 1.PCPの腹腔内投与は内側前頭前野での細胞外グルタミン酸濃度の急峻な増加を惹起した。 2.この急峻なグルタミン酸濃度の増加とPCPによる移所運動増加という異常行動には相関が認められた。 3.PCPによる細胞外グルタミン酸濃度の急峻な増加はclozapineにより阻止された。 4.clozapineの腹腔内投与により、内側前頭前野で、細胞外グルタミン酸濃度は遅発性に増加し、この遅発性グルタミン酸濃度の増加は、ドパミンD1受容体遮断薬であるSCH23390あるいはNMDA受容体遮断薬であるCPPの同部位の局所灌流により阻止された。 PCPによるグルタミン酸濃度の急峻な増加は、GABAニューロン上のNMDA受容体遮断を介していることを考えると、clozapineはNMDA受容体機能を亢進させることで、PCPによるグルタミン酸濃度増加を阻止した可能性がある。ドパミン仮説のみでは説明不能な統合失調症の病態を説明するNMDA受容体機能低下仮説がある。Clozapineは、NMDA受容体機能亢進作用により、ドパミン受容体遮断を主作用とする定型抗精神病薬で改善不十分な病態に影響する可能性がある。Clozapineによる内側前頭前野で遅発性のグルタミン酸濃度の増加は、NMDA受容体刺激及びD1受容体刺激の結果である可能性がある。
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