研究概要 |
有棘赤血球舞踏病(chorea-acanthocytosis, CHAC)は、神経精神症状に加え有棘赤血球症を示す稀な常染色体劣性遺伝性神経変性疾患である。最近、我々は限局した地域のCHAC患者4症例3家系を対象としたポジショナルクローニングで病因遺伝子CHACを発見し、病因変異Ehime-欠失変異を同定した。今回我々は、マウスのCHAC-cDNAをクローニングし、マウスゲノム配列と比較の結果、エクソン-イントロン構造を決定した。続いて、上記のヒトにおける疾患変異であるエクソン60および61を欠失するEhime-欠失変異をもつ疾患モデルマウスをジーンターゲティングの手法を用いて作成し、解析を行った。その結果、変異ホモ接合体マウスでは、生後一年半を過ぎてから徐々に表現型が出現し、foot print testとrotarod解析およびopen field解析を用いた運動・行動解析では運動能力障害および自発運動量の低下を認めた。また末梢血には有棘赤血球症が確認され、赤血球脆弱化試験ではホモ接合体マウスが野生型マウスより有意に浸透圧負荷に対し溶血しやすかった。病理学的所見は線条体および中脳黒質でアポトーシスとグリオーシスを認め、神経細胞の脱落が観察された。これらはヒトでのCHACの所見と合致するものであり今回作成したtargeted CHACマウスは疾患モデルマウスとして妥当であると考えられた。
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