研究概要 |
転写制御の観点から血液細胞の分化制御およびlineage switchを分子レベルで検討するため、骨髄球系特異的転写因子であるC/EBPα,PU.1をエストロゲンレセプターのリガンド結合領域と融合させ、4-hydroxy tamoxifen(4-HT)に反応する活性誘導型転写因子を作製した。これらをpMX-IRES-GFPレトロウイルスベクターを用いてBaF3細胞に遺伝子導入したところ、樹立したBaF3/CEBPα-ER, BaF3/PU.1-ER細胞は4-HT刺激で細胞増殖が急激に抑制され、一部はアポトーシスをおこして死滅した。これらより、作製したER融合転写因子は期待通りに機能していることが確認された。 続いてこれら分子をH-2Kプロモーターのコントロール下で発現するトランスジェニックマウス(Tg)を作製した。C/EBPα-ER Tgは計8ライン、PU.1-ER Tgは計5ラインにおいてtransgeneの染色体へのインテグレーションをサザンブロット法により認めた。このうちC/EBPα-ER TgではRT-PCR上5ラインにtransgeneの発現を認め、さらにウエスタンブロット法でこのうち1ラインのみがC/EBPα-ER蛋白を発現していた。RT-PCRおよびウエスタンブロットによる各組織の発現解析では、C/EBPα-ERは胸腺・脾臓に高発現しており、骨髄・末梢血でも中等量発現していた。また、発現したC/EBPα-ER蛋白は4-HTに反応してDNA結合能を示すことがゲルシフト法により確認された。PU.1-ERマウスについても同様の解析を現在施工中である。 今後はこれらのTgマウスを用い、4-HTにより転写活性を誘導した場合の血球分化の変化をコロニーアッセイ、FACSなどにより詳細に解析していく予定である。
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