研究概要 |
1)慢性リンパ性白血病細胞におけるメチル化異常: MCA/RDA法を用いて、正常CD19陽性Bリンパ球と慢性Bリンパ性白血病(B-CLL)におけるDNAメチル化を比較し、B-CLL細胞において高あるいは低メチル化されているDNA領域の単離・同定を行った。正常Bリンパ球に比較して高メチル化されているDNA領域を5カ所、低メチル化を27カ所同定した。この結果からB-CLLでは低メチル化領域が多いことが示唆され、高メチル化DNA領域が多く同定されたATLと対照的な結果であった。低メチル化領域はchr.9q34,10q25-26,19q13など特定の部位に集積する傾向が認められた。低メチル化されているDNA領域に近接する遺伝子解析の結果、B-CLL細胞株においてbeta3 subunit chain of laminin-5 (LAMB3)などの遺伝子発現増強が認められた。 2)ATL細胞における異常メチル化DNA領域の単離: MCA/RDAを用いてATL細胞とキャリアの感染細胞を比較することにより腫瘍細胞で特異的に高あるいは低メチル化されているDNA領域を同定、解析した。ATL細胞で低メチル化され発現している遺伝子としてMEL1Sを同定した。MEL1S発現の生物学的意義を検討するためにマウスT細胞株であるCTLL-2にMEL1Sを発現するベクターを導入した。MEL1S発現CTLL-2ではTGF-βに抵抗性となっていた。以上の結果からMEL1S遺伝子はTGF-βに対する抵抗性を賦与することが示された。 ATL細胞で高メチル化されている遺伝子を単離したところKLF4,EGR3遺伝子を含む7種類の遺伝子が高メチル化により発現を抑制されていた。EGR3遺伝子を発現させるとFasリガンドの発現とともにアポトーシスの増加が認められた。EGR3の発現抑制によりFasリガンドの発現が抑制されアポトーシスを回避していることが示された。
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