研究概要 |
正常形質細胞と悪性形質細胞(骨髄腫細胞)とでは明らかに膜表面分子の発現が異なる。中でも、本年度はCD45分子に注目した。CD45分子は、骨髄腫患者からの骨髄腫細胞で一部にしか発現しておらず、しかもそれはCD45ROを発現している。正常形質細胞はCD45分子を発現しており、CD45RAアイソフォームを発現しCD45ROは発現していない。骨髄腫細胞株U-266,ILKM2,ILKM3,NOP-2,AM01等においても、CD45分子の発現はIL-6依存性細胞株U-266,ILKM2,ILKM3に限られていた。IL-6による増殖反応は、CD45分子の存在に規定されていた。U-266細胞株では、CD45+細胞とCD45-細胞とがあることよりそれぞれ分取して、IL-6刺激後の細胞内シグナル伝達を解析した。CD45+ U-266細胞はIL-6に反応して増殖でき、細胞内ではsrc型チロシンキナーゼLynの活性化が認められた。CD45分子のフォスファターゼ活性あるいはチロシンキナーゼの抑制剤は増殖反応を完全に抑制したことより、CD45分子の存在はIL-6による増殖反応を規定することを確認した。CD45-細胞株へCD45遺伝子を導入して、このことを更に確認するとともに、IL-6刺激後のCD45分子の膜上での動態を解析した。まず、CD45(CD45RA, CD45RB, CD45RO)、STAT3,IL-6Rαあるいはgp130 cDNA等をPCRでクローニング後、それぞれCFP, GFPあるいはYFPベクター等に組み込んで融合ベクターを作製した。CD45-細胞株U-266,NOP-2等にリポフェクション法で遺伝子導入して、安定発現株を得た。CD45導入細胞株での細胞表面でのそれらの発現を確認した後、IL-6刺激後のCD45分子の膜上での動態をレーザー共焦点顕微鏡で観察した。特に、ラフト分画での動態に注目して観察した。
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