我々は、発作性夜間血色素尿症(PNH)において、GPIアンカー欠損造血幹細胞がクローナルに拡大するメカニズムを解明するために、GPIアンカー欠損細胞のみが12番染色体異常をもつPNH症例に注目し、その切断部位に存在するHMGA2を同定した。HMGA2は、間葉系良性腫瘍において高頻度に異常となる遺伝子である。我々は、患者骨髄におけるHMGA2遺伝子の発現をTaqMan probeを用いたリアルタイムPCR法により解析した。βActinを内部標準遺伝子としてHMGA2遺伝子の発現を5人の正常骨髄細胞と比較したところ、正常ではほとんど検出できなかったが、患者J20では、有意に上昇していた。また、どのような転写産物が発現しているかを明らかにするために、3'RACE-PCRを行い、予想される転写産物の領域をプローブにしてサザンブロティングをしたところ、患者では、すでに脂肪腫で報告のあるInton 4のcryptic exonをもつ転写産物が特異的に発現していたが、exon 5をもつ転写産物は、検出されなかった。さらに、5' UTRに存在する多型マーカーを用いたRT-PCRにより、HMGA2の転写産物が異常アレルから発現していることが明らかになった。それ故、本症例では、異常なHMGA2が、GPIアンカー欠損細胞のクローナルな拡大に関与している可能性が強く示唆された。最近、PNHにおいてEGR1やRhoAの発現の上昇が報告されている。また、RhoAによりEGR1とHMGA2の発現が調節されているという報告もされていることから、この経路の異常が、PNHにおけるクローナルな拡大に関与することが想像される。
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