研究概要 |
1)CLC-3ノックアウトマウスの解析を行い報告した。CLC-3ノックアウトマウスはホモ変異体でも生存したが、明らかに成長が野生型に比して悪く、出生後の死亡率も高かった。さらに失調、神経細胞の脱落、網膜視細胞の脱落などの症状から、ヒトNeuronal ceroid lipofuscinosis (NCL)モデルであるかを確認するため、電子顕微鏡的にライソゾーニム内に蓄積物質が存在するか否か、またNCLの、疎水性に富んだFlFO-ATPase subunitCが細胞内に蓄積することがいわれているので、その蓄積を免疫染色、細胞を分画後のウエスタンブロットにて検討した。この結果、細胞内にelectron denseなdepositを認め、subunitCの蓄積も確認されCLC-3ノックアウトマウスはヒトNCLモデルであることが確定した 2)次に、なぜCLC-3クロライドチャネルの異常がNCLに結びつくのかを探るため、CLC-3が存在する細胞内膜系の膜内のpHを測定した。In vivoではFITC-dextranをマウスの腹腔内に注射し、肝臓組織よりベジクルを生成し、蛍光により膜内のpHを測定した。この結果、ノックアウトマウスでは有意に高い膜内pHを認め、CLC-3が後期エンドソームないしライソゾームでpH環境維持に関与していることが示され、そのpH上昇が、ライソーゾーム酵素の活性を阻害し、いわゆるlysosomal storage diseaseを引き起こすのではないかと考えられた。 3)CLC-3,5とノックアウトマウスは作成されたが、同じファミリーに属するCLC-4のノックアウトマウスは報告がない。今回、ターゲティングベクターの作成を終了し、ES細胞の組み替え体を200クローンスクリーニングし、1ケ組み替え体をえた。キメラマウス作成中である。その他、膵ベータ細胞でのインスリン分泌にCLC-3の関与を報告する文献が存在したため、単離膵島細胞にてインスリン分泌能を検査したが、CLC-3ノックアウトで変化は見られなかった。
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