腎糸球体上皮細胞障害によりもたらされる蛋白尿発症機序の解明

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14370317
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 河内 裕 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (60242400)
• 研究分担者: 小池 廣子 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (90323964) ; 清水 不二雄 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (40012728)
• キーワード: 蛋白尿 / 糸球体上皮細胞 / スリット膜 / ネフリン / ポドシン

研究概要

蛋白尿発症機序解明のため、糸球体係蹄壁のバリアー機能維持に重要な役割を果たすと考えられているスリット膜の分子構造、分子間相互関係の解析を行った。従来、検討してきたネフリンに加え、本研究課題の今年度(平庫14年度>の研究では、ポドシン、CD2AP, ZO-1, NEPH-1などの分子の性状、蛋白尿発症時の動態、ネフリン、ポドシン分子間の結合性などについての検討を行った。まず、各種病態モデルにおける、ポドシン、CD2APの検討を行うため、これら分子のラットホモローグのクローニングを行った。また、微小変化型ネフローゼ症候群、フィンランド型先天性ネフローゼ、膜性腎症のラット実験モデル材料を用いての検討を行い、これらの病態で、ネフリンのみならずポドシン、CD2AP発現が低下しており、ネフリン、ポドシンの局在が乖離していることをつきとめ、これらの分子の結合がバリアー機能維持に必須であることを明らかにした。次に、ポドシン分子の全身各臓器における発現についての検討を行い、ポドシンは糸球体上皮細胞のみならず、神経系組織にも発現し、特にアストロサイト表面に強い発現があることを認めた。この所見はポドシンが糸球体係蹄壁のバリアー機構のみならず脳血液関門のバリアー機能にも関与していることを示唆する所見である。ポドシンに関しての一連の検討結果は、J Am Soc Nephrol誌2003年1月に発表した。また、CD2APに関しての研究結果は、平成14年10月米国フィラデルフィアにて開催された第35回米国腎臓学会にて報告した。また、ケモカインの1種であるInterferon inducible protein-10(IP-10)が、糸球体上皮細胞に発現していること、IP-10がネフリン、ポドシンなどスリット膜の機能分子の発現調節に関わっていることを世界に先駆けて発見した。IP-10発現についての一連の研究結果についても第35回米国腎臓学会にて報告した。現在は、上述の各スリット膜関連分子のin vitro発現系の確立についての検討を行っており、これら分子の相互関係、interaction siteの同定などの解析を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Kawachi H: "Molecular structure and of the slit diaphragm : expression of nephrin in proteinuric states and in developing glomeruli"Nephrol dial Transplant. 17. 1-3 (2002)
• [文献書誌] Ikezumi Y: "FK506 ameliorates proteinuria and glomerular lesions induced by anti-Thy 1.1 monoclonal antibody 1-22-3"Kidney Int. 61. 1339-1350 (2002)
• [文献書誌] Ito Y: "Fractalkine expression and the recruitment of CX_3CR1^+ cells in the prolonged mesangial proliferative glomerulonephritis"Kidney Int. 61. 2044-2057 (2002)
• [文献書誌] Tanaka H: "Rapidly progressive, pauci-immune diffuse Crescentic glomerulonephritis in an infant"Pediatr Nephrol. 17. 730-732 (2002)
• [文献書誌] Matsuda M: "Therapeutic effect of sulphated hyaluronic acid, a potential selctin-blocking agent, on experimental progressive mesangial proliferative glomerulonephritis"J Pathol. 198. 407-414 (2002)
• [文献書誌] Kawachi H: "MAb 5-1-6 nephropathy and nephrin"Microsc Res Tech. 57. 236-240 (2002)
• [文献書誌] Cao Z: "Angiotensin type 2 receptor antagonism confers renal protection in a rat model of progressive renal injury"J Am Soc Nephrol. 13. 1773-1787 (2002)
• [文献書誌] Bonnet F: "Nephrin expression in the post-natal developing kidney in normotensive and hypertensive rat"Clin Exp Hepertens. 24. 371-381 (2002)
• [文献書誌] Forbes JM: "Modulation of nephrin in the diabetic kidney : association with systemic hepertension and increasing albuminuria"J Hypertens. 20. 985-992 (2002)
• [文献書誌] Maruyama H: "Kidney-targeted naked DNA transfer by retrograde renal vein injection in rats"Hum Gene Therl. 13. 455-468 (2002)
• [文献書誌] 河内 裕: "抗スリット膜抗体による蛋白尿"腎と透析. 53. 569-573 (2002)
• [文献書誌] 河内 裕: "遺伝子異常と蛋白尿"小児科. 43. 617-623 (2002)
• [文献書誌] Kawachi H: "Cloning of rat Homologue of Podocin : Expression in proteinuric states and in developing glomeruli"J Am Nephrol. 14. 46-56 (2003)
• [文献書誌] 河内 裕: "専門医のための腎臓病学"医学書院. 524 (2002)