研究課題/領域番号 |
14370325
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大磯 ユタカ 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40203707)
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研究分担者 |
尾崎 信暁 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (70378082)
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キーワード | 家族性中枢性尿崩症 / バゾプレシン / ノックインマウス / 視床下部 / 器官培養 / 遺伝子変異 / 細胞内輸送障害 / 神経細胞死 |
研究概要 |
家族性中枢性尿崩症(FDI)は多尿、多飲の症状が生後数ヵ月から数年で出現する常染色体優性遺伝形式を示す疾患である。1991年にわれわれが世界に先駆けて変異遺伝子の存在を報告して以来、FDIの患者においてはvasopressin(AVP)遺伝子上に約50種類の点突然変異が報告されている。今回の研究は、FDIの発症機構を、変異遺伝子を導入したknock-in mouse系を作製・樹立した上で、その病態を詳細に解析し、さらにこのモデル動物をツールとして、FDIを始めとした各種神経内分泌疾患、神経変性疾患の病態を解明することを目標に設定した。種々のFDIの遺伝子変異の中から、AVP遺伝子の中のニューロフィジン(NP)領域の変異の一つであるCys67stopを導入したノックインマウスをジーンターゲッティング法により作製した。その結果得られたモデル動物を用い、各種生理学的検討(体重、尿量、飲水量、尿浸透圧、下垂体AVP含有量)を行い表現形の解析を行うとともに、異常NPを認識する抗NP抗体を作製し、またAVP産生核におけるAVP mRNAの発現レベルを検討した。ノックインマウスのうち、ホモ変異体は生後1週間以内に全例死亡したためヘテロ変異体において比較検討したが、尿量は生後1ヶ月より経時的に増加、尿浸透圧は経時的に低下し、下垂体のAVP含有量も経時的に低下した。組織学的には正常および異常NPの軸索における染色性の低下を認めた。また、AVPmRNAの発現レベルは生後3ヶ月より低下した。これらの点より、多尿の発症段階に、異常NPによるドミナントネガティブ効果、あるいはAVPmRNAの発現レベル低下が関与していることが示唆され、尿崩症症状の発症の初期段階には細胞死が必須ではない可能性が示唆された。また、視床下部器官培養法を用い、室傍核におけるAVP遺伝子発現機構を詳細に検討する実験系を確立し、in vitroにおけるAVP遺伝子発現解析を可能とした。
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