研究概要 |
(1)AP-1/IL-11シグナルカスケードの解析 1.fosB/delta-fosBの転写促進機構の解析 力学的負荷はERK依存性にfos family遺伝子およびIL-11mRNAを誘導する。そこでfos familyのうちin vivoで骨形成促進能を有するdeltafosBの誘導機構を詳細に解析した。まずfosBプロモーターをクローニングし、力学的負荷がその活性を促進する事を示した。さらにこの作用は細胞内外のCa、ERK, CREBに依存性で、プロモーター上のCRE配列を介して発揮されることが明らかとなった。 2.AP-1とSmadとのクロストーク 力学的負荷が通常BMPシグナルの下流に位置するSmad1をPKC依存性に活性化することを見出した。この効果はin vitroにおける骨芽細胞に対するshear stressのみならず、マウスへの運動負荷によってもin vivoの骨において観察された。またこのように力学的負荷により活性化されたsmadは、特にdelta-fosBと効率よく協調的に作用してIL-11遺伝子などのAP-1依存性の転写を増強することにより骨形成促進に関与していることが示された。 (2)IL-11による骨芽細胞アポトーシスの制御機構の解析 PTHはデキサメタゾンやエトポシドで誘導される骨芽細胞のアポトーシスを約50%抑制した。PTHはアポトーシスに伴うbcl-2の発現低下を抑制したことから、PTHの抗アポトーシス作用にbcl-2発現促進の関与が示唆された。PTHはIL-11の発現を誘導するが、IL-11もPTHと同様の抗アポトーシス作用とbcl-2発現低下阻止作用を示した。さらにPTHの抗アポトーシス効果はIL-11の中和抗体で部分的に抑制されたことから、一部はIL-11の誘導を介していると考えられた。またデキサメタゾンはIL-11の発現を転写レベルで抑制することから、IL-11(発現の抑制)はそのデキサメタゾンのアポトーシス誘導の機序自体にも関与していると考えられた。
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