平成15年度の研究により、小胞体ストレス応答による膵β細胞アポトーシス機序の解析において新たに以下の知見を明らかにした。 細胞レベルにおける研究においては、マウス膵β細胞由来のMIN6細胞に、小胞体ストレスにより糖尿病を起こすマウスであるAkitaマウス(Ins2遺伝子にC96Y変異を有する)の変異プロインスリンを発現させてMIN6細胞での小胞体ストレス関連遺伝子であるCHOPの発現を検討した。この結果、CHOPが発現誘導されることが明らかとなった。 また、2型糖尿病モデルラットであるOLETFラットとその対象群であるLETOラットにおける膵β細胞での小胞体ストレスの有無を検討するため、週齢毎のLETOラットとOLETFラットの体重、血糖値、血漿インスリン値を測定するとともに、膵β細胞におけるインスリン、Bip、CHOPの発現をnorthern blotにより解析した。この結果、2型糖尿病モデルラットの解析では週齢とともに、OLETFはLETOに比べて体重、血糖、血漿インスリン濃度は有意に12週齢以降上昇することが明らかとなった。また、膵β細胞におけるインスリン、Bip、CH0P mRNAの発現はOLETFでLETOより高かった。このことよりOLETFの糖尿病発症機序の病因に小胞体ストレス経路が関与している可能性が示された。 以上のことより、小胞体ストレスは膵β細胞において小胞体ストレス関連蛋白を誘導し、Akitaマウスのみならず2型糖尿病モデルラットであるOLETFラットの病因にも関与していると考えられる。この結果は、小胞体ストレス機序が糖尿病の病態に深く関与していることを示唆するものである。
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