研究概要 |
重症患者の血中サイトカイン動態に遺伝子多型が如何に関与しているかを検討するためにintensive care unit(ICU)経過中IL-6血中濃度が10000pg/mL以上まで異常に上昇した症例群(A群)と,10000pg/mL未満にとどまった症例群(B群)とに分類し侵襲早期に産生されるTNF-αおよびIL-1ra遺伝子の多型解析を行った.その結果A群において特定のgenotype(TNF-αの-308 base pair(bp)上流に位置するG>Aのsingle nucleotide polymorphism(SNP)(TNF-α-308^*G/A)におけるTNF-α-308^*A, IL-1β-511^*C/TにおけるIL-1β-511^*T, IL-1 receptor antagonist(IL-1ra)の2^<nd> intronに存在するvarious number of tandem repeat(VNTR ; IL-1raRN^*1-5)におけるIL-1raRN^*2 or RN^*3)が高頻度に認められ,これらサイトカイン血中濃度異常高値症例において高率に認められたあるgenotypeのサイトカイン産生能に対する関与が示唆された.さらにそれらhigh-risk alleleを有する患者の血中サイトカイン動態は,high-risk alleleを有さない患者に比し,我々がサイトカイン・モジュレータとしての有用性を主張してきた.PMMA膜hemofilterを用いた持続的血液濾過透析でも制御困難であり,予後も不良であった. 一方,IL-6の主要な転写因子のコンセンサス配列近傍に位置するIL-6-174^*G/Cについては,IL-6-174^*C carrierは一例も存在しなかった.またIL-6-596^*G/Aにおいても,IL-6-596^*A carrierは存在しなかった.今回検討した遺伝子多型のうち,TNF-α-308^*G/A, IL-6-174^*G/C,およびIL-6-596^*G/Aは,Caucasianを対象とした既報との間にallele頻度について大きな較差が認められた.これは遺伝子多型によって人種間格差が存在することを示す一例である.一方で,このように臨床経過に大きな影響を及ぼすSNPは患者の重症化を予知する上で有用な指標となり得る.
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