研究概要 |
癌の外科治療を困難にしている癌細胞の多様性をひきおこす遺伝子群を解明することを目的とした。マイクロダイセクションの手法を用いて多様性(heterogeneity)の見られる異なる部位(一つの腫瘍の異なる部位間、あるいは原発巣と転移巣間)から遺伝子を抽出し、DNAマイクロアレイ法により遺伝子発現プロファイルの差異を調べることで、多様性(heterogeneity)に関与する、あるいはそれを調節する遺伝子群を包括的に解明することを行った。まず胃癌転移に関する解析を報告した(Mori et al.,Surgery 2002)。 リンパ節転移を伴った胃癌5例の癌部、非癌部および転移巣より目的の細胞のみを採取した。mRNAを用いて増幅した後DNA microarrayを施行した。その結果(1)原発巣癌細胞と健常胃細胞との比較では、蛋白分解酵素関連遺伝子であるMMP7等が前者で強発現していた。一方、caspase8などのアポトーシス関連遺伝子は前者で発現が減弱していた。(2)原発巣癌細胞と転移巣癌細胞との比較では、cdk4,FGF2、EGFR, Rho・VEGFやMMP7が前者で高値を示していた。更に乳癌、食道癌、肝癌にて同様の検討を平成15年に行ったが、癌に共通して発現が上下する遺伝子群と、臓器特異性を持って上下する遺伝子群を抽出することが可能であった。以上のことから細胞レベルからみた転移関連遺伝子の正確な発現プロファイルを明らかにできることが示された。遺伝子群の包括的解析を現在進めているところである。
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