研究概要 |
【背景と目的】 輸血による免疫修飾誘導機序にドナー由来細胞生着によるmicrochimerismが有力視されている。また,妊娠によってmicrochimerismが成立する場合があると言われている。同種抗原感作と免疫寛容は相互排他的に存在するが,microchimerismの成立がどちらに誘導するのか重要な役割を演じているとの仮説の下に研究を行なった。 【研究方法】 1.HLAクラスII:異なるクラスIIアリル(DR4,またはDR15)を標的にしてnested PCR法を用いて検出限界microchimerismを探索した。 2.妊娠既往女性のY染色体microchimerism : Y染色体をマーカーに男児妊娠既往女性と非妊娠女性の末梢血中の男性由来DNAを増幅して、microchimerismを評価した。 【結果】1.HLAクラスII遺伝子増幅法:全血100μLより抽出したDNAを蒸留水20μLで溶解し,10μLを使用した。DR4をDR12,14保有者にパルスした場合の検出感度は0.00001であった。同様にDR15をDR9,14にパルスした場合の感度も0.00001であった。理論上1ml血液のなかに15個の細胞を検出できる感度となる。Y染色体SRYを標的とした場合より約10倍感度が落ちる。 2.男児妊娠既往女性:男児妊娠既往女性の15/18名(83%)にY染色体DNAが検出された。一方,妊娠既往の無い女性には1/28名(3.6%)からだけ検出された。 【考察】SRY標的PCR法は非常に感度良く検出できるが,HLAクラスIIを標的とした場合は更なる感度向上が必要である。SRYを指標にすると高率で母親に胎児細胞が生着し、マイクロキメリズムが成立していることが判明した。
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