研究概要 |
【背景と目的】 輸血がもたらす免疫修飾の誘導に、ドナー由来細胞の生着が候補として考えられている。また、妊娠・分娩によってもマイクロキメリズムが母体とその児に成立し、特異的な免疫寛容が成立することもある。妊娠・分娩や輸血による同種免疫とマイクロキメリズムの関連を明らかにすることを目的とした。 【研究方法】 1.男性Y染色体に存在するSRY遺伝子とHLA-DRB1を標的とするマイクロキメリズムの検出:nested PCRによる検出感度の向上。 2.妊娠・分娩既往女性と非妊娠女性におけるマイクロキメリズム検索。 3.腎移植待機患者の同種免疫感作の測定。 4.妊娠による血小板抗原免疫感作の検索。 5.未熟新生児の輸血抗原と母体抗原にたいする同種免疫感作。 【結果】 1.マイクロキメリズムの検出感度:SRY遺伝子を標的に用いると、全血1mlに存在する男性細胞1〜5個を可能だが、HLA-DRB1を標的とすると感度は10〜100分の1程度になる。 2.SRY遺伝子を用いると、男児妊娠女性の84%(16/19)に、非妊娠女性では3%(1/37)に胎児由来と考えられるマイクロキメリズムが成立している。 3.腎移植待機患者の17%(117/693)が同種抗体を保有し、暴露歴があると20%に上昇する。 4.妊娠女性の0.9%(223/24,630)が同種血小板抗原に対し、感作を獲得している。 5.未熟新生児は輸血同種抗原や母親抗原に対し、感作を得ていない(0/52)。 【考察】 SRYを標的としたマイクロキメリズム検出は感度に優れ、HLA-DRB1と比べ、10〜100倍の感度があり、微量の細胞を検出できる。妊娠既往女性の8割が胎児由来のマイクロキメリズムを形成している。腎移植待機患者の17%がHLA同種免疫を、妊娠女性の0.9%が血小板同種免疫を獲得しているが、未熟新生児は同種免疫を獲得しがたい。
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