研究概要 |
現在までにマイクロアレイ、エストロゲン受容体転写共役因子のなかから、ホルモン応答遺伝子の候補としてERα、ERβwt、ERβcx、PgR、AIB1、NcoR1、HDAC6,HDAC1,IGFBP4、IGFBP5が上げられている。これらの因子をmRNAレベルもしくは蛋白発現レベルで検討し、乳癌臨床例について臨床的重要性について検討した。 1)mRNA/cDNAの調整、マイクロダイセクション 再発乳癌のホルモン療法施行例で効果判定が確実に行われている症例、あるいは術前ホルモン療法を行い効果判定が確実に行われている症例の腫瘍からマイクロダイセクションにて腫瘍細胞のmRNAを抽出している。現在まで、前者で18例、後者で17例の抽出が済んでいる。将来的にはさらに症例を積み重ねたいと望んでいる。また、培養細胞としてはMCF-7、BT-20、BT-474、MDA-MB231のさまざまなホルモン状況に応じてストックされている、mRNAの抽出が行われている。 2)候補遺伝子のmRNA発現定量的解析 ホルモン受容体(ERα、ERβwt、ERβcx、PgR):ERα、PgRは免疫染色法により発現を検討し、ホルモン療法との効果では半定量による量的評価が重要であることが判明した。ERαはwt(wild type)もcx(c-terminal splicing variant)も予後良好であることが判明したが、ホルモン療法の効果との検討は不十分であった。 HER2陽性、p53過剰発現例、Ki-67高発現例ではホルモン療法の効果が乏しい傾向であったが、とくにp53では統計学的に有意に反応性が乏しかった。 ホルモン転写共役因子(AIB1、NcoR1、HDAC1)ではNCoR1やHDAC1のようなERの転写に直接関わる因子が予後良好でホルモン依存性が高いと評価できたが、AIB1はHER2などの膜型増殖因子からの転写刺激も受けて発現するため単独での評価は困難であった。 エストロゲン反応性cDNAアレイにより得られた候補遺伝子のなかでHDAC6は、予後因子として重要であることが判明し、さらに現在ホルモン療法反応性との間で検討しているが、有望な結果を得ている。 また、以前から16番染色体長腕に位置する癌抑制遺伝子の検索を進めていたが、ATBF1-A遺伝子がその候補遺伝子として臨床的価値を持っていることが示唆された。
|