研究概要 |
1.血液細胞、各種培養細胞を用いた、温度・酸素濃度変化の細胞機能に与える影響の解析:本年度は、特に酸素濃度の変化が細胞機能に与える影響を中心に検討した。血管内皮細胞を高濃度(90%)酸素下で培養すると、IL-8遺伝子発現が亢進し、さらに細菌内毒素共存下ではIL-8産生量も増加するが、さらにこの機序を解明するため、高濃度酸素単独、または細菌内毒素共存下で各種MAPキナーゼの活性化を経時的に観察した。ERK,p38,JNKのリン酸化物量を経時的に測定したところ、高濃度酸素下では細菌内毒素刺激30分後にリン酸化JNKの発現量が特に増加することが判明した。 2.各種異常環境に暴露された患者の病態解析:sepsis、高体温などで来院した患者50名を対象に、血液中の各種サイトカインとHGFを測定した。SIRS病態下では測定したTNFα、IL-6,IL-8,IL-10,HGFのいずれも高値をとり、さらにSIRS診断基準や感染徴候を示す患者では特にこれらサイトカインが高値をとっていた。またHGFと他のサイトカインの値の間では、他のサイトカイン間と比較し相関が低く、HGF産生調節の独立性が示唆された。 3.熱傷・敗血症または敗血症単独マウスの病態に及ぼす体温変動の影響:Balb/cマウスの背部に、約30%のIII度熱傷創を作成し、7〜11日後に微量の細菌内毒素を投与する系を用いて、本年度は生体反応性を修飾する因子を解析した。肺、肝組織中IL-12,IL-18含量を経時的に観察したところ、予想に反し肝のIL-18含量が熱傷後7日まで漸減することがわかった。現在、IL-18の補充による生存率、免疫変動への影響を解析中である。
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