研究概要 |
エーテル吸入麻酔下にて体重200g前後の雄性Lewis、またはF344ラット、を開腹し、総胆管より30μガイドワイヤーを挿入し、ガイドワイヤーにそって腹側膵管のみを摘出した。約1.0cmの膵管をtissue chopperにて0.5mm角に細切した。膵管組織片を冷却10%TGP含有RPMI-1640(水溶液状態)に混和し、24穴プレート内に組織片が1〜2個/穴になるように約1.0mlづつ分注した。37℃ホットプレート上に置き水溶液状態RPMI-1640培養液をゲル化した。分化誘導因子HGF10ng/ml、KGF10ng/ml、nicotinamide 100mMを添加した10%FBS含有RPMI-1640 1.0mlをゲル上に分注した。炭酸ガス培養器にて培養した。 培養1週目より膵管組織片の周辺から細胞が新生、増殖し、4週目には200μ前後の大きさの細胞集塊を呈した。6週目には細胞集塊は約300μに達した後、培養を継続しても大きさを増すことも、壊死することもなかった。4週目及び6週目の細胞集塊のHE染色像では核の大きさは未分化な細胞より構成されていた。PDX-1染色は陰性であったがCK19染色は陽性であった。12週目の細胞集塊もPDX-1陰性、CK19陽性細胞より構成されていた。2,4,8、12週目の細胞集塊のPDX-1m-RNAの発現をRT-PCRで検討したところ、いずれの段階においても発現がみられなかった。 上記の結果により6週目以降膵管上皮細胞様細胞に分化する事が判明した。4週目以降の培養条件としてブドウ糖濃度を500mg/dlとした培養液で膵管組織片を培養した。その結果、8週目頃より細胞集塊は500μ前後に増大し、12週目で800μ前後の大きさとなり、その後大きさを増す事はなかった。HE染色にて大きさを20〜50μの管腔様構造を呈する細胞が散見された。PDX-1陽性細胞が所々みられ、多くはCK-19陽性細胞であった。しかし、インスリン、グルカゴンいずれも陰性であった。膵内分泌前駆細胞の可能性が示唆された。
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