研究課題
本年度の研究では、(1)臓器移植免疫寛容動物の作製及び解析:同種異系ラット肝移植免疫寛容ラットの作成は臓器移植後の免疫抑制剤FK506の投与による誘導し、移植後グラフトが100日を超えた後、従来の細胞免疫学の方法を用いて末梢血のリンパ球を分離し、FACSにて細胞表面の分子について解析を行い、CD4+、CD25+細胞集団がNaiveのラットより有意に増加していることを明らかにした。一方、免疫寛容動物から得られたリンパ球の養子移植実験を行い、免疫調節機能を持つリンパ球の存在を確認することができた。(2)DNAチップによる既知遺伝子の解析:このリンパ球集団のRNAを分離し、Affymetrix社のgene chipを用い、isograftのそれと比較したところ、464個の有意に変化した遺伝子を見いだした。その中から統計学的な処理(t-test)を行い、211個(P<0.05)の候補遺伝子を見つけた。その内訳は既知遺伝子135個、ESTからなる未知の遺伝子76個である。既知遺伝子について、免疫調節リンパ球において上昇した遺伝子は58個、isograftにおいて上昇した遺伝子は80個。未知遺伝子について免疫調節リンパ球において上昇した遺伝子は41個、isograftにおいて上昇した遺伝子は35個であった。(3)臨床生体肝移植後免疫抑制剤離脱症例の解析:京都大学医学部附属病院において、計画的減量を行っている80人の患者の内、完全離脱19人、減量中53人、拒絶反応をきたした者8人であった。非計画的減量を行っている50人では、完全離脱34人、減量中4人、拒絶反応をきたした者12人であった。三重大学医学部附属病院においても平成14年3月5日から生体肝移植が開始され、これまでに23例に生体肝移植が行われた。3名に対してEBウイルス感染症のために非計画的に減量が進められたが、2名は拒絶反応をきたして減量は中止された。1名は離脱後6ヶ月を経過しているが拒絶反応をきてしていない。また、三重大学医学部倫理委員会においても、新規遺伝子探索研究が平成14年10月に承認された。
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