研究概要 |
本年度の研究では、(1)新規免疫抑制剤FTY720と抗ICOS抗体の併用にて,ラット肝臓移植モデルを用い,免疫寛容動物の作製及び解析を行った:同種異系ラット肝移植免疫寛容ラットの作成は臓器移植後,免疫抑制剤FTY720,抗ICOS抗体のそれぞれの単独投与,或いは両試薬の併用による移植動物の生存率にて判定を行った(2)雄性マイナー組織適合抗原H-Yを用いた,免疫感作法とメモリーT細胞の誘導に関する免疫抑制剤FTY720の影響に関する解析を行った。本研究結果から,新規免疫抑制剤FTY720は,その広い治療薬量(0.01mg/kg〜10mg/kg),抗ICOS抗体(0.01mg〜5mg/rat)も同様に単剤治療では永久生存(100日以上)を得ることは出来なかったが、両剤の併用にて,永久生存を示すものが多数観察された。本結果から,新規免疫抑制剤FTY720は,抗ICOS抗体を含む細胞接着因子との相互作用を介して,強力な免疫制御作用を発揮する事が期待され,臨床移植の応用に於いても,今後大いなる希望を与えるものと考えられる。更に雄性マイナー組織適合抗原H-Yを用いた,免疫感作法とメモリーT細胞の誘導に関する免疫抑制剤FTY720の影響に関する解析結果から,メモリーT細胞に対して,FTY720は,実質的に影響を与える事は無いという実験結果を得た。一方,遺伝子導入マウスを用いたこれまでの研究報告では,メモリーT細胞は長寿命を示すのに対して,ナイーブなT細胞の寿命は,2ヶ月未満であるとの報告がvon Boehmer等(J Exp Med 1993)によってなされたが,ラットを用いた解析結果では雄性組織適合抗原H-Yに対するナイーブT細胞の寿命は6ヶ月以上を示すものである事が明らかとなった。
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