研究概要 |
本研究は体性幹細胞システムを利用した肝臓組織再建法・再生法を確立することを目的としている。本年度の研究実施計画としては1.爆発的増殖力を持ち長期生存能を持つ肝上皮様細胞のフラスコ内での大量培養法の確立。2.大量培養し肝上皮様細胞を用いて体内に移植可能なミニ肝臓組織を再建する技術の確立。3.この肝上皮様細胞を肝細胞機能を発揮する細胞へと分化転換する技術の確立を目標に掲げた。第1の目標に関してはフラスコ内でこの細胞のスフェロイドを形成させるために必要なフラスコ内壁のコーティング基質の選択と血清無添加培養液の組成の検討を行っている。第2の目標に関しては、採取、分離した肝上皮性幹様細胞をラットの皮下に移植して肝細胞塊を形成させることに成功した。この細胞塊では通常の肝細胞よりも小型の肝細胞が増殖し集塊を形成していた。免疫組織学的にはAFP、アルブミンは弱陽性に染まったが通常の肝細胞と比較すると弱いものであった。第3の目標ではこの細胞を各種抗体を用いて免疫組織学的に染色した。結果はAFP陽性,CD34一部陽性,Flk-1強陽性,PECOM-1強陽性、CK7/17ごく一部陽性、Albumin陽性(核),von Willebrandは一部陽性であった。また、HE,PAS染色ではエオジン好性の細胞質、PAS陽性顆粒が認められた。今回の検討でCK7/17は疑陽性なのに対し内皮細胞に認められるFlk-1、CD34,PECOM-1が強陽性であったことはこの細胞がヘリング管由来ではなく内皮細胞系列であることを示唆するものと考えられた。この細胞にはVEGFのreceptorであるFlk-1が強く発現していることからVEGFを投与することにより劇的に増殖、分化する可能性が示唆された。この細胞を密集させて培養する過程で蔓状に発達した血管類似の構造物に変化するのを観察した。
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