研究課題/領域番号 |
14370379
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
有井 滋樹 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50151171)
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研究分担者 |
森 章 京都大学, 医学研究科, 助手 (60324646)
川村 徹 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助手 (90322081)
寺本 研一 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (80197813)
柴田 徹 京都大学, 医学研究科, 助手 (40293857)
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キーワード | 血管新生 / 消化器癌 / 個別化診断 / 解糖系酵素 / 好気性代謝 / 嫌気性代謝 / 血管新生因子 |
研究概要 |
固形癌の増殖には血管新生が不可欠とされている。しかし、実際の臨床例においては血管新生が僅かであるにもかかわらず、旺盛な増殖能を有すると考えられる癌腫が存在する。言い換えれば、各々の癌の増殖機構における血管新生依存度は一様でないと考えられる。したがって、癌の増殖に対する有効な阻害戦略の構築には各々の癌の増殖機構を個別的に明らかにすることが重要である。本研究では癌の増殖においては血管新生による好気性代謝と同時に嫌気性解糖も大きく関与しているとの観点から、肝細胞癌および転移性肝癌の臨床サンプルを用いて血管新生因子VEGFと解糖系酵素のhekisokinase II (HK-II)のmRNA発現と腫瘍血管密度との相関を解析した。さらに両遺伝子が低酸素応答モチーフを有し、HIF-1のコントロールを受けると推察されることからHIF-1αの発現と上述の両遺伝子発現との関連性についても検討した。その結果、肝細胞癌ではVEGFと腫瘍血管密度が弱いながらも相関を示したが、転移性肝癌では肝細胞癌に比べて血管密度は低くVEGFの発現も弱かったが、HK-IIの発現が著しかった。一方、肝細胞癌ではHK-IIの発現は肝動脈塞栓療法を受けたサンプルにのみ認められた。HIF-1αの発現は腫瘍の壊死部近傍に多く観察され、HK-II、VEGFの発現と相関し、とくに転移性肝癌では肝細胞癌に比べてHIF-IαとHK-II発現の相関が高かった。このように癌腫によって、また同一組織型の癌においてもその酸素環境によりその増殖機構が血管新生或いは嫌気性解糖系に対する依存度を異にすることが明らかになった。この結果は癌に対する個別化治療を考えるうえで重要な知見である。
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