研究概要 |
金沢大学医学部附属病院心肺・総合外科の管理下にあるヒト大腸癌のDNAライブラリーに13例の進行大腸癌症例を加えたヒト大腸癌由来DNAおよび対応する,cDNA各153サンプルを用いて実験を施行した。 正常大腸粘膜と大腸癌組織から得たcDNAサンプルについて、TS遺伝子の非翻訳領域に存在する繰り返し配列を挟んで増幅を行う二つのプライマーを用いてPCRを行なった。その結果、153サンプル中54サンプル(35%)で正常大腸粘膜のTS遺伝子型が2R/3Rのヘテロであった。一方、それら54サンプルについて対応する大腸癌組織のTS遺伝子型をみると、2R/3Rは21サンプル(39%)のみであった。残り33サンプルについて18p11マーカーであるD18S59を用いたLOH analysisを施行した。その結果、2R/lossが13サンプル(24%)、3R/lossが20サンプル(37%)と、TS遺伝子座を含むアレルの欠失が33サンプル全てにみられた。正常大腸粘膜のTS遺伝子型がホモのものについては、2R/2Rが9サンプル(6%)、3R/3Rが90サンプル(59%)であった。正常大腸粘膜がホモのサンプルに対応する大腸癌組織についても、D18S59を用いたLOH analysisを施行した。その結果、正常大腸粘膜が2R/2Rである大腸癌組織では、5/9(56%)に、3R/3Rである大腸癌組織では、54/90(60%)にTS遺伝子座を含むアレルの欠失が認められた。これらより、正常大腸粘膜のTS遺伝子型に関わらず、大腸癌組織で60%にTS遺伝子座を含む18pの欠失が存在することが明らかになった。現在、D18S59以外に5種類の18p11マーカー(D18S476、D18S481、D18S52、,D18S452、D18S453)と18p12.3のマーカーD18S57を使用し、18pの欠失範囲の判定を行なっている。
|