樹状細胞(以下DC)が特異的キラー活性を有する活性化リンパ球を誘導するためには、DCが未熟段階から成熟段階に至るまでの間のどのステップで腫瘍抗原と接触させるのが至適条件であるのかを検討した結果、成熟化する前の時期での腫瘍抗原によるパルスが最も効率的であることが判明した。また、DCを成熟化させる過程で腫瘍壊死因子(TNF-α)を添加するとさらに高い細胞障害活性を有するリンパ球が誘導されるこども判明した。ただし、このDCに対する腫瘍抗原パルス法によって誘導されるリンパ球はNK活性やLAK活性も高いことが認められた。 次に、樹状細胞による抗原捕獲とプロセッシングが最も効率よく遂行されるためのパルス用抗原の作製方法について検討した。すなわち、胃癌細胞株(MKN-45とKATO-III)を抗癌剤(マイトマイシンC ; MMC)処理あるいは凍結融解処理して得られた腫瘍抗原でDCをパルスし、この成熟DCによって誘導された活性化リンパ球の細胞障害活性を測定した結果、MMCで処理した方が高い活性が得られた。なお、MMC処理した場合には腫瘍細胞の壊死が高頻度に観察されることが判明した。 DCを用いて誘導した活性化リンパ球療法を臨床応用するためには、どのような処理法によって腫瘍抗原を作製するかがキーポイントとなるため、抗癌剤処理や凍結融解処理を行った場合の腫瘍細胞の形態の変化や、抽出される蛋白の性状等を詳細に検索することが平成15年度の研究における先決課題と考えられる。
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