平成14年度は、樹状細胞による抗原捕捉とプロセッシングが最も効率よく遂行されるためのパルス用抗原の作製方法について検討し、抗癌剤であるマイトマイシンC(MMC)で癌細胞を処理して得られた腫瘍抗原でパルスした場合に比較的高い細胞障害活性を有する活性化リンパ球が誘導されることが判明した。しかし、MMC処理した場合には腫瘍細胞の壊死も高頻度に観察されることから、実際の臨床応用では悪液質の増強をもたらす可能性が推測される。一方、進行消化器癌に対する凍結治療が、担癌生体の抗腫瘍免疫機構を賦活する可能性が示唆されていることから、平成15年度の研究においては、低用量の抗癌剤で腫瘍細胞を処理したり、凍結融解処理を行った場合の腫瘍細胞の形態の変化、誘導された活性化リンパ球の細胞傷害活性を検討した。その結果、アポトーシス関連蛋白であるp53の発現形式がwild typeの胃癌株MKN-45を低用量CDDP・5-FUで処理し、それを腫瘍抗原として健常人より採取した樹状細胞をパルス後、この樹状細胞を用いて健康人末梢血単核球から誘導した活性化リンパ球はMKN-45に対して高い細胞傷害活性を示した。しかし、MKN-45を凍結融解処理して得られた腫瘍抗原を用いて樹状細胞をパルスした場合には、CDDP・5-FU処理の場合と比較して低値であった。一方、p53が欠失している胃癌株KATO-IIIを用いて同様の検討を行った場合には、凍結融解処理抗原を用いた方が高い細胞傷害活性が獲得できた。すなわち、p53 wild typeの癌細胞をCDDP・5-FUで処理して得られる腫瘍抗原、あるいはp53が欠失している癌細胞を凍結融解処理して得られる抗原が樹状細胞の抗原提示能を増強して特異的免疫応答を惹起する可能性が示された。
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