研究概要 |
本研究に着手するまでに、我々は、内胚葉系細胞に高いgreen fluorescent protein (GFP)発現を示すトランスジェニックマウスを利用することで、マウス成体肝より肝幹細胞を同定・分離し、さらに肝幹細胞特異的な細胞表面抗原となりうる遺伝子を同定しつつある。その中には既知の遺伝子の他に未知の遺伝子配列が含まれており、これらの遺伝子が肝幹細胞特異的マーカーとして利用可能かどうかを、肝幹細胞と成熟肝細胞との間で遺伝子発現や蛋白発現を比較検討している。さらに、これらマウス表面抗原のDNA配列をPCRで増幅後プラスミドにサブクローニングし、ヒトホモローグのDNA配列を検索中である。一方、ヒト成人肝組織を用いた実験では、我々が胎仔および成体マウスで確立した肝幹細胞を高効率に分離する手法を用いることで(安近ら、Hepatology,2002)(東ら、Hepatology,2003)、ヒト肝幹細胞を濃縮分離できることを確認した。しかし、その後マウスにおける実験結果から、この手法で分離された細胞集団は既知の表面抗原を用いることで肝幹細胞のみならず、いくつかの集団に分類されることが確認され、その細胞集団の内でThy1陽性の間葉系細胞と考えられる細胞集団は、CD49f陽性の肝幹細胞の分化・成熟化に重要な役割を果たすことを解明した(北方ら、Hepatology,2004,in press)。このため、ヒトにおいても分離した肝幹細胞をin vitroにおいて成熟肝細胞へと分化誘導する際には同様の間葉系細胞との共培養や、リコンビナント蛋白が必要となることが考えられ、現在この間葉系細胞の分離および特性解析を行っている。このように我々はマウスにおける肝幹細胞特異的表面抗原の特定、および成熟肝細胞への分化誘導の手法を確立しつつあり、現在も引き続き同研究を推進している。
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