研究課題/領域番号 |
14370387
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 雄造 京都大学, 医学研究科, 講師 (70281730)
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研究分担者 |
寺嶋 宏明 京都大学, 医学研究科, 助手 (40314215)
山岡 義生 京都大学, 医学研究科, 教授 (90089102)
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キーワード | cvclic AMP / protein kinase A / PDEIII inhibitor / 細胞内シグナル伝達 / 肝虚血再潅流障害 / adenylate cyclase stimulator / 肝微小環境 |
研究概要 |
肝組織中cAMP-PKA活性化による肝虚血再潅流障害抑制効果の検討においては、まずcAMP分解酵素阻害剤(PDE III inhibitor)であるミルリノンを投与することで、肝組織中cAMPの分解を抑え、結果、再潅流後の血清肝逸脱酵素値を有意に抑制しうることを確認した。この改善効果の機序解明に向けて、生体顕微鏡を用いた観察により、ミルリノン投与群では対照群に比して、肝虚血再潅流後の肝類洞における再潅流率の改善、leukocyte-endothelial Interactionの抑制効果があることを確認した。さらに、別のPDEIII inhibitorであるオルプリノン、またcAMP産生を賦活するadenylate cyclase stimulator (NKH477)の二剤についても検討を加え、両者ともに、肝虚血再潅流後の血清肝逸脱酵素値を有意に抑制しうることを確認した。以上の三剤は全て、既に心不全治療薬として臨床利用されている安全性の確立された薬剤であり、これらの事実は、肝虚血再潅流障害を抑制しうるcAMP値の上昇を、他のストレス前処置法に比してより安全かつ低侵襲に施行しうる可能性を示唆するものと考えられる。以上の事実を踏まえ平成15年度は、さらなる機序の解明に向けてcAMP値の上昇に続く細胞内シグナル伝達の検討を行っていく予定である。すなわち、PKA(cAMP dependent protein kinase)の活性化、転写因子CREB(cAMP responsive element binding protein)の転写誘導とNF-κBの転写抑制、その結果引き続くpro-inflammatory geneの発現抑制など、詳細な検討に移る予定である。加えて、これら一連の変化が、虚血再潅流後の肝微小循環に与える影響についても生体顕微鏡を用いたさらなる解析を行う予定である。
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