研究概要 |
類洞壁細胞の活性化制御による硬変肝虚血再潅流障害抑制効果の検討においては、チオアセタミド(TAA)投与によるラット肝硬変モデルを確立し、caveolin-1発現増強をWestern blotで確認した。次にcaveolin-1産生を抑制するHMG-CoA reductase inhibitor前投与の肝虚血再灌流障害抑制効果について検討するためにpravastatinを使用した。投与群ではのpravastatinを0.5mg/kgBWx週3回x2週間,経口投与した。30分の全肝虚血を負荷し再潅流後の血清肝逸脱酵素を対照群と比較した。正常肝では予想に反し投与群の方が有意に高値であった一方、硬変肝では投与群にて低値傾向があるも有意差はなかった。以上よりpravastatinによる肝虚血再灌流障害抑制効果は、臨床応用に推し進めるためには大きく期待できないものと思われた。しかしながら、ROCK/Rho kinase inhibitorであるY-27632前投与が正常肝虚血再灌流後の微小循環を改善する事、pyrrolidine dithiocarbamateがheme oxygenase-1を誘導し類洞を著明に拡張することを見出し、類洞壁細胞の活性化をこれらの方法で制御できる目途が立った。平成15年度はこれらの手法にて硬変肝虚血再灌流障害抑制効果を検討する予定である。また、硬変肝における特異的遺伝子発現の検討においてはDNA arrayにより正常肝と比較検討した結果、testis-specific HSP, MAPK4, TOP II B, TOP I, CyclinE, HSF1等の転写抗進とrhodanese, DAO, ferredoxin 1, MDR2, SOD2等の産生抑制が確認された。各物質の発現変化の意義・メカニズムについては平成15年度の研究項目となる。
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