研究概要 |
研究計画に沿い、paclitaxel週一回投与法,CPT-11週一回投与法の第I/II相試験、Docetaxel/TS-1の第II相試験を行い、網羅的解析などによる遺伝子発現情報と抗がん剤感受性との照合、およびヒト腫瘍細胞株を用いた機能証明実験により、 1.多数の効果関連遺伝子群の発現情報を付与することにより様々な抗がん剤の効果を定量的に予測する薬剤応答予測モデルを開発した。 2.cDNAマイクロアレイにおける発現シグナルの標準化について、アレイデータの補正システム、および遺伝子発現状況の推定システムを新たに開発し特許を申請した。 3.消化器がん化学療法の中心的薬剤であるフッ化ピリミジン系薬剤につき、効果・副作用に深く関連するジヒドロピリミジン脱水素酵素の遺伝子発現機構を解析し、プロモーター領域のメチル化や転写因子AP-1が発現調節に深く関与していることを明らかにした。 4.抗がん剤応答への深い関与が示唆されたBCL-2,DEC1,DEC2,HIF1αについて検討し、それら因子の機能(細胞老化との関連、低酸素応答における役割など)について明らかにした。 5.予後に影響するがん細胞の不死化形質に関し、telomerase活性と関連して特徴的な発現を示す遺伝子群を明らかにした。 6.paclitaxel及びCPT-11ともにphase Iを終了し、前者では日本人に特徴的と思われるCYP2C8の多型を見出したが、CYP3A4,CYP2C8の多型解析による副作用予測の限界を示唆した。後者ではUGT1A1^*28による重篤な副作用例の予測の可能性とともに、薬剤活性化酵素であるcarboxyl esteraseの活性を規定する遺伝子型としてCES1A2が重要であることを示唆した。 7.Docetaxel/TS-1のphase II studyを終了し、進行胃がんの標準的治療法になりうる可能性を示した。
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