研究概要 |
本年度の研究では、われわれが実施している癌免疫療法の臨床試験(癌特異的ペプチドワクチン療法第I相試験及び自己活性化リンパ球癌局所投与第II相試験)に登録された癌患者から採取した癌組織の遺伝子発現解析を行うためのプロトコールを作成し,本学倫理委員会の承諾を受けた。また,上記免疫療法に登録された癌患者の臨床効果に基づき,有効群・不変群と無効群患者に分類し,末梢血などの細胞免疫の変化について詳細に解析した。その結果,末梢血のみならず治療用培養活性化リンパ球においてもCD4+CD25+リンパ球分画が強いregulation作用を示し,effector T cellの腫瘍細胞傷害性に影響を及ぼしていた。さらに,in vitroでのサイトカイン産生実験では,培養上清に於いてTGF-βの増加と,IL-2,IFN-γ及びTNF-αが減少することが解明された(唐,山名ら,AACR発表,2003)。一方,免疫感受性に関連する遺伝子発現解析の研究については,臨床的有効群,不変群(5名),及び無効群(3名)の治療前後の癌組織を,十分な説明と同意を得た上でを採取し,ただちに液体窒素容器内で冷凍保存した。また,現在さらに症例を蓄積中である。 基礎研究としての、自己活性化リンパ球とプロテアソーム阻害薬との併用実験では,その相乗効果が確認された。即ち,プロテアソーム阻害薬(PS-341)と免疫活性化分子TRAILの併用により,乳癌やメラノーマ細胞株などに対して細胞傷害性の増強が確認されたほか,プロテアソーム阻害薬(PS-341)で処理した乳癌細胞株(MDA-231)においては,Western Blotting解析によりapoptosisのdeath receptor pathwayにおいてIAPs発現が減弱し,Bc1-2,Casepase-9,-8,-3などへの影響は認められないことが確認された(唐,山名ら,日本癌学会発表,2002).
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