研究概要 |
現在,進行固形癌に対する免疫療法の臨床効果において、有効例と無効例との差異に関する基礎解析がされていず、癌局所と所属リンパ節及び免疫細胞に焦点を絞り、有効群と無効群とをマイクロアレイ(DNA Tip)を用いた遺伝子解析を加えることによって遺伝子レベルでこれらの差異を検討し、ワクチン療法や自己活性化リンパ球による癌免疫療法の効果を事前に判定可能か否かを研究する目的で本研究を計画実施した。さらに癌免疫療法の治療効果をより向上させるために、新しい免疫製剤(プロテアソーム阻害薬)との併用や、自己免疫疾患回避として出現するレギュラトリーT細胞の抑制を視野に入れ、これらを基礎実験研究によって解明し、高度進行固形癌に対する今後の免疫療法の成績向上を目的として実施した。しかし、癌免疫療法臨床試験に登録された患者の多くは腫瘍組織採取が不能な状態であり、さらに説明の段階で遺伝子解析を拒否される患者も存在し、有効群6例と無効群5例の計11検体を得ることができたが、解析可能な検体数には至らず、更に検体の確保を行っている。 一方、ヒト癌細胞におけるプロテアソーム阻害薬(PS-341)を用いた基礎研究では、TRAIL抵抗性腫瘍をPS-341で処理するとTRAIL感受性増強効果が認められた。さらに、癌患者の免疫抑制機構解明の目的で、自己活性化リンパ球中のCD4+CD25+T細胞deletionの基礎実験を行ったところ、抗IL-2α受容体抗体の投与によりregulatory T-cellは減少し、NK/LAK活性の増大とTGF-β産生抑制を認めた。本研究では、検体数の問題から遺伝子解析が残されたままであるが、プロテアソーム阻害剤(PS-341)によるTRAIL感受性の増強効果と免疫抑制CD4+/CD25+T細胞増加を防止する化学療法を試みており、比較的良好な成績を挙げつつある。
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