研究概要 |
血管成長因子であるVEGFを間歇的に静脈内投与し、超音波を照射することで選択的に肺血管へ取り込ませ肺血管成長を促進させる方法の実験的研究を行った。幼若ratを用い、VEGF(100μg/kg)を静脈内投与する群と生理食塩水を静脈内投与するコントロール群を作成し投与後15分間超音波(0.5W/cm2,1MHz)を左側肺領域に投射しVEGFの肺血管内への取り込み量と局在の違いを免疫染色とELIZA法で検討した。またVEGF投与2週間後に肺の組織を採取し、肺内での肺小動脈の密度(肺胞数/肺血管数)を測定して2群の両側肺間で比較した。その結果、VEGFを投与し超音波を照射した側の肺で血管でのVEGF発現が増強し、2週間後に有意に肺血管数が増加していた。これはVEGFを間歇的に静脈投与し、肺血管の成長を促進させる臨床応用の可能性を示した。しかしながら、入手できるVEGFは大変高価であり、そのまま臨床応用するには高額な費用が必要となるため、より安価なVEGF選択的導入をめざし、VEGFの遺伝子導入の実験を行った。幼若ratの末梢静脈よりplasmidにconjugateしたLacZを100μg/kg投与し、左肺に超音波を15分間照射し、1日後、2日後に左右肺組織、肝臓を採取してβ-Gal染色を行った。残念ながらこの実験では肺、肝臓にLacZの発現を確認することはできなかったが、近年各領域で超音波を用いた遺伝子導入が報告されていることから、今後は適切なplasmid投与量をもとめ、さらにコントラストエコー造影剤を併用することにより組織中へのplasmid取り込みを促進させる方法で肺血管へのVEGF遺伝子導入を可能性とし、肺血管成長促進療法に道を開くことが期待される。
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