研究概要 |
本研究の目的は,移植肺への免疫抑制性サイトカインIL-10の遺伝子導入が,拒絶反応を制御し,さらにレシピエントに移植肺に対する免疫寛容(トレランス)を誘導するか否かについて,ラット肺移植モデルを用いて検討することである. 平成14年度には,近交系ラットを用い,以下の2種類の経路で,レポーターgene(β-galactosidase)を移植肺に導入することができるか否かについて検討した.遺伝子導入に際しては,アデノウイルスベクターを用いた. (1)摘出肺への経気道的なベクター直接注入による遺伝子導入 ラット摘出肺の気管支断端より,ベクター溶液を0.3〜0.5mlを直接注入し,まず同系肺移植を行って遺伝子導入の可否を検討した.3〜5日後に移植肺を摘出して,X-gal染色を施してβ-galactosidase発現の有無を観察したとこと,肺胞上皮細胞ならびに肺胞マクロファージに導入が確認された. (2)摘出肺の肺動脈へのベクター注入による血管内皮細胞への遺伝子導入 肺移植時に用いる肺保存液にベクターを溶解し,これを肺動脈から注入することで肺血管内皮細胞への遺伝子導入が可能か否かについて検討した.レポーターgeneを含む溶液を肺動脈から注入し,30分経過後に肺移植を行い,3〜5日後に移植肺を摘出して,X-gal染色を施してβ-galactosidase発現の有無を観察したが,この方法では,肺血管内皮細胞における遺伝子導入が確認されなかった.今後,レポーターgeneをMAAに接着させる方法を用いて,肺血管内皮への遺伝子導入が可能か否かについても検討する.
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