本研究の目的は、非ウイルスベクター法のひとつであるDNAコーティング金粒子カウンターショック法を用いて移植心への遺伝子導入を行うことにより、冠動脈内膜肥厚の抑制をはかることである。DNAコーティング金粒子カウンターショック法による移植心局所への遺伝子導入を行うための基礎的データの収集のため以下の研究を行った。 まずin vitroにおけるDNAコーティング金粒子カウンターショック法を用いたGFP遺伝子導入および遺伝子発現の検討として、DNAコーティングプロトコールを用いてGFP遺伝子を金粒子表面へコーティングしたものをin vitroにおいて遺伝子導入装置(PDS-1000/Heシステム・BIO-RAD)によりCOS細胞へ遺伝子導入を行った。蛍光顕微鏡下でCOS細胞における遺伝子発現量を確認した。 次にin vivoにおけるDNAコーティング金粒子カウンターショック法を用いたGFP遺伝子導入および遺伝子発現の検討として、ラットドナー心を摘出後、心保存中に上記のごとく金粒子表面へコーティングしたGFP遺伝子をカウンターショック法を用いて遺伝子導入し、同系ラットの頚部へ異所性心移植を行った。移植後に移植心を摘出し、GFP発現を確認した。導入遺伝子の発現量は移植後3日目に最大であり、最長3週間までの発現を確認した。 以上のごとくDNAコーティング金粒子カウンターショック法を用いた移植心への遺伝子導入は可能であるということが本研究での成果であった。今後は機能性遺伝子を用いて、移植心冠動脈内膜肥厚の抑制が可能であるか否かについて検討を続けていく予定である。
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