研究分担者 |
宮本 裕治 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (80229898)
澤 芳樹 大阪大学, 医学部附属病院, 助教授 (00243220)
松田 暉 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00028614)
高野 弘志 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70346196)
福嶌 教偉 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (30263247)
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研究概要 |
本研究の目的は,補助人工心臓(Ventricular Assist Device, VAD)を要する重症心不全末期の症例に対して,新しい治療strategyとして心筋再生因子による心筋再生療法を行ない,自己心機能の回復を促進し,補助循環からの離脱(Bridge to Recovery)を実現することである. 本年度はまず,VADによる左心室減負荷が心機能回復に及ぼす影響,特に心筋虚血後の左心室リモデリング(LV remodeling)との関係について検討を行った.実験動物にはヤギを用い,冠動脈左前下行枝を結紮し広範囲前壁心筋硬塞による不全心を作成した.それらのヤギにVADを装着し,循環動態の維持および,心室の減負荷を行い,装着後1ケ月間に渡り,VAD補助下に心機能の経時的変化を測定した.1ケ月目にVAD離脱テストを行い,その後,心臓の組織学的な検討を行った.心筋梗塞作成後,心拍出量,心室壁運動は共に著明に低下した.VAD装着後,徐々に心機能の回復を認めたものの,VAD離脱テストでは,血行動態の悪化により,循環維持は困難で,離脱は不可能であった.組織学的にも左心室の内腔拡大,心筋細胞の肥大性変化および線維性変化を認めた.これらの結果より,VADによる心室減負荷のみでは,不全心におけるLV remodelingを十分に抑制し,Bridge to Recoveryを実現することは困難であることが明らかとなった. これらの限界を打破するために,自己心機能の回復を促進するための心筋再生因子について研究を行い,そのひとつとして,我々は肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor, HGF)が有用であることを報告しており,今回のヤギを用いた実験結果をもとに,同様の不全心に対してHGF遺伝子治療を行い,心機能の回復,LV remodelingの抑制の効果について,検討を行っている.
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