現在までに公に発表した業績はない。また研究の主たる目的であったライボザイムベクターの作製にも成功していない。これは、ライボザイムベクターの設計に問題があったと考えられる。従って、ライボザイムベクターに替わり、血管新生を抑制するRNA interferenceを作製することでその代用とした。本研究では、血管新生抑制のターゲットをVEGF receptorに定め、Flk1およびFlt1を抑制するRNA interferenceをデザインした。現在までに、マウスのVEGF recepteor-1 mRNAを抑制する4つの候補のsiRNAを作製した。それらは、遺伝子配列とGC比から選択された。VEGF R1及びR2が発現していることが周知であるマウスのMS1-VEGF細胞株に、これらの4種類の候補siRNAを投与し、48時間培養したところ、Mockに比べて最大で60%以上のVEGF R1mRNA発現抑制を認めた。このため、最も効果が期待できる候補siRNAと同様の配列をもつloop構造を持ったmRNAが発現できるpSilencer-VEGF R1を作製し、前述のMS1-VEGF細胞株に形質導入したところ、最大で60%以上のVEGF R1mRNA発現抑制を認めた。その結果、siRNAを用いた血管新生抑制を利用した腫瘍増殖抑制の可能性が、充分示唆された。
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