腫瘍の増殖において血管新生が重要であることは広く知られている。この腫瘍の血管新生を抑制することは腫瘍増殖抑制を導き抗腫瘍療法に新たな道を供給する。この血管新生は促進因子と抑制因子の両方で制御されており、我々は血管新生抑制因子を強制発現し腫瘍の増殖抑制効果を証明してきた。今回はVascular endothelial growth factor(VEGF)に着目しこのリガンドであるVEGF receptor(VEGF-R)をターゲットとして血管新生を抑制することを目標とし、その手段としてライボザイムを用いることとした。しかしながらこのVEGF-Rの発現を抑制するライボザイムを産生するベクター作成は困難を極め断念した。その代わりとなり得る候補としてRNA interference(RNAi)に注目した。これは数十塩基の二重鎖RNAでありながら強力なmRNA発現抑卸効果を有する。我々はVEGF-R mRNAの発現を抑制するRNAiをデザインした。このRNAiの候補はその構造から4種類が選ばれsilencer siRNA kitを用いてRNAiを作成しVEGF-Rを発現しているマウスのmicro vascular cell line(MS1-VEGF)に投与したところ一つの候補で60%のVEGF-R mRNA発現抑制効果を示した。この候補RNAiを発現するRNAiと同等に作用するヘアピン構造をもったRNA(分泌されると速やかにヘアピン部で折れ曲がり二重鎖のごとく働く)を発現するベクター(pSilencer-VEGF-R)を作成しその腫瘍増殖抑制効果を検討した。このpSilencer-VEGF-RをMS1-VEGFに形質導入したところVEGF-Rの発現は有意に(60%)抑制された。このベクターをマウスの転移性肺腫瘍モデルにin vivo形質導入を行ったが予想したほどの腫瘍抑制効果は認められなかった。
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