研究概要 |
僧帽弁閉鎖不全患者に対する弁形成術は,弁尖・弁輪・腱索・乳頭筋の複雑な僧帽弁の協調運動を温存できるという点から第一選択手技となっている.しかし,弁形成術は医師の経験・勘に依存するところが大きく定量的な手技選択基準が存在しないのが現状である. そこで,僧帽弁手術に焦点を当てた心臓外科手術訓練シミュレータを開発した.本シミュレータは生体と同等の流量・圧力を模擬することが可能であり,かつ同一条件下において僧帽弁手術に関連する手技やデバイスを比較・評価することができるという利点がある.開発した拍動循環型シミュレータの概要を以下に示す. (1)僧帽弁部位に新鮮なブタ心臓より摘出した僧帽弁を挿入,個定 (2)僧帽弁組織を空間的に変位させることにより,実際に即した病態を再現 (3)拍動流下にて,標準状態と僧帽弁疾患時における僧帽弁手術施行後の血行動態が取得可能,かつ乳頭筋に作用する負荷データを取得可能. 次に,上記のシミュレータを用いて,その応用を行うため現在臨床使用される医療用具(僧帽弁形成用人工弁リング)の特性比較や,様々な僧帽弁形成術(人工腱索再建,Edge-to-edge法)の評価を行った.実験の際は,現役心臓外科医の協力の下手技を施行し,手技施行の前後で血行動態データ及び負荷データを取得した. 本研究は臨床情報の透明化に向けたひとつの試みとして位置づけられ,今後更に本シミュレータを応用することにより外科医の技術向上や新しいインフォームドコンセント形式の提供など,その用途はさらに拡大するものと考えられる.
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