研究概要 |
非小細胞肺癌症例(A904)から2つの自己腫瘍特異的CTL clone(clone1,clone2)を樹立した。cDNA epression cloning法により、CTL clone 1の認識する抗原をコードする617アミノ酸の、ORFを含む3339bpのcDNA cloneを単離同定した。このcDNA cloneは既知遺伝子のsplicing variantであり、CTLの認識する9-merのエピトープペプチドを同定した。CTL clone 1はHLA-A24拘束性に他家肺癌も認識することより腫瘍共通抗原としての有用性が期待できる。CTL Clone 2についても解析が進み、抗原遺伝子として1593bpのcDNA cloneを単離し、9-merのエピトープペプチドを同定した。このcDNAはDatabaseに登録されているが機能が不明の遺伝子であった。CTL clone 2はHLA-Cw7拘束性に他家肺癌も認識することより共通腫瘍抗原として期待できる。 一方、同症例の腫瘍組織をSCIDマウスに移植することによりマウス血清中に腫瘍内浸潤B細胞由来のヒト型IgG抗体が産生される。このIgG抗体をプローブとし自己腫瘍から作成したcDNA libraryを用いてSEREX法により抗体の認識する腫瘍抗原同定を行ったところ、9つの未知遺伝子を含む22の遺伝子を単離した。この遺伝子の中にはtrans-membrane domainを持つものが4つ含まれており、内一つは腫瘍に高発現する遺伝子であり癌特異的な抗体療法の可能性も示唆された。SEREXで同定された抗原の一つは変異型p53であり、同症例のリンパ球を変異を含むp53由来ペプチドで刺激培養したところ、自己腫瘍も障害する変異型p53ペプチド特異的CL cloneが得られた。同一腫瘍抗原に対して、液性および細胞性免疫応答が同一患者に存在することが証明された。さらに別の自己肺癌-SCIDマウスの系ではTIB由来IgG抗体が認識する抗原を3つ単離しており、内一つはcancer-testis antigenであった。
|