研究概要 |
肺癌は早期から全身転移をきたしている傾向が強く、肺癌の進展に伴い、TM4SF複合体異常を解明していくうえで、最も重要なことは、各病期のはっきりした細胞株を樹立することである。現在我々は株化細胞を樹立する際、コラーゲンにマトリジェルを50%の割合で混合したものに、2次継代し、ついでそのうえに通常の液体培地を加えることにより、ほぼ90%近い細胞株化に成功している。このゲル培地を改良したことにより初期培養から癌細胞を継代し、株化させることが非常に容易になってきた。これにより、病理組織からの標本と異なり、正常細胞のコンタミを避けてmRNAや蛋白の抽出が可能となる。そこで、様々な肺癌の病期における細胞株を樹立していった。初めmetaplasia, dysplasia, AAH, 計7種をこの方法で培養を行ったが、初代培養はコラーゲンゲル中では成功したにも関わらず、やはり正常に近いためか細胞株にまで樹立することには成功できなかった。従って、癌化の前段階における解析にはこれまで通り免疫組織染色や直接イムノブロッティングを行うしか無いと考えられた。一方、病理的に肺癌と診断されているものからは,順次、株細胞を樹立していった。I期肺癌は3種の細胞株の樹立に成功し、II期肺癌はやはり3種、またIII期肺癌は化学療法を術前に行っているものが多いためか8例試みたが、コラーゲンgel dropletの段階で壊死に陥っている部分が多く、結局1例しか今のところ樹立していない。次いでIV期肺癌はこれのみ転移部より標本を採取し3種の細胞株の樹立に成功した。そこで、MRP-1/CD9、KAI1/CD82、PETA3/CD151について複合体の解析を行った。I期では前2者とも発現していたが、PETA3/CD151は弱発現のみを示した。II期細胞株ではKAI1/CD82が減弱しているものが2例、MRP-1/CD9が減弱しているものが1例、それに比べてPETA3/CD151は1例に強発現を認めた。次に、III期肺癌ではKAI1/CD82のみが減弱しておりMRP-1/CD9,PETA3/CD151は発現していた。また、IV期の転移細胞株ではすべてにおいてPETA3/CD151の発現が優位を示した。更に細胞株を樹立してこの複合体の解析を進めていく予定である。
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