研究概要 |
本研究においてわれわれは,重症心不全(特に心筋梗塞および拡張型心筋症)に対する細胞療法のfeasibilityを主に動物モデルを用いて検証した.移植細胞としては,技術的・倫理的・免疫学的観点から臨床応用へのハードルが低いと考えられる患者自身の骨髄細胞を想定し研究を計画した. ・心筋梗塞に対する細胞療法:心筋梗塞動物モデルにおいて梗塞部位へ同系骨髄細胞を移植することで,移植細胞が心筋細胞や血管内皮細胞へと分化するとともにparacrine作用による内因性幹細胞の集積,分化,増殖が相乗的に働き,心機能が改善されることを明らかにした.さらに,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を心筋梗塞作成後に投与すると,骨髄幹細胞が心筋へ集積し一部は心筋細胞へ分化することで生存率が改善することを証明した. ・拡張型心筋症に対する細胞療法:Doxorubicinによる拡張型心筋症モデルへ同系骨髄単核球を移植することで心筋壁厚が保たれ,心機能も有意に保持されることを明らかにした.さらに,このモデルにおいて,Doxorubicin注射終了後すぐにG-CSFを投与した群において最も高い生存率と骨髄幹細胞の心臓への集積率を示し,早期にG-CSFを投与することが心不全の改善に有効であることが示唆された. ・心筋細胞移植治療の評価法および安全性に関する検討:心筋細胞移植治療の評価法として,コントラストエコーがブタ筋梗塞モデルでの細胞移植部での血流分布と毛細血管密度の測定に有用であることを明らかにした.また心筋細胞移植の安全性の検証として,ブタモデルで細胞浮遊液10mlまでは局所投与しても,急性期心機能への影響を認めないことをPressure-volume(PV)計測にて実証した.さらに,ラット拡張型心筋症モデルを使った不整脈誘発実験で細胞移植が不整脈を誘発しないことを証明した.
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