研究課題
脳神経外科領域において極めて微細な手術操作を要する手技を安全に行うために、マスタースレーブ型ロボッティックマニピュレーターを用いた脳神経外科手術システムを開発している。平成14年度は当初の計画に準じ、共同研究者の光石研究室においてこれまで製作されたロボティックマニピュレーターの技術を応用し、脳神経外科手術に適するように小型であり、深く狭い手術野でも操作が可能なマニュピュレーターを開発した。これまで開発されているマスタ・スレーブ方式による手術支援システムとして、da VinciシステムやZEUSシステムが既に商用化されている。しかしこれらのシステムは腹腔下手術を目的としたものであり、サイズが大きいため脳外科手術用としては用いることができない。脳神経外科用の微小手術操作支援システムとしてはHuman systemが挙げられるが、このシステムは通常の脳神経外科手術の用途には可動範囲が不十分であるため、その拡大が求められている。そこで我々は小型でかつ自由度が大きく、特に深部で広い範囲の操作ができるようなシステムを構築している。今回開発したシステムの特徴は直径5mmの2本の細径のロボティック鉗子の先2cmが左右90度の範囲で屈曲できるようにし、それぞれの鉗子は軸中心に回転でき、また並進方向は100mm程度の伸縮、不動点回りに-10度から+10度まで回転を可能とした点にある。鉗子はモーターにより開閉、Rガイド下の安全・確実な動作が可能である。現在、光石研に既存のマスターコントローラーとの配線を行っており、3月中に動作確認・精度調査・ポリエチレンチューブの縫合実験を行い、5月よりラットの血管吻合実験を開始する予定である。今後システムの精度・動作チェックの後、画像装置の改善・マニピュレーターの操作向上のための仕様の検討、また、さらに操作性向上のため3本目のマニピュレーターの装着を計画している。